玉の守りとは反対側の香車。
これ、簡単に相手に取らせていませんか?
ぶっちゃけ、玉の反対側の香車(や桂馬)は「取られるのが普通」みたいなところがあります。相手に渡っても「ふーん」くらいにしか思わない人が多いかもしれません。
しかし、香車は攻守に使い勝手の良い駒。相手に渡さないに越したことはありません。そのため、取られないようジッと逃げておく方がよい場合があります。
今年の小学生名人戦から 香車を逃がせばよかったのでは
たとえば、2020(令和2)年の小学生名人戦・決勝での一場面。
(図は便宜上先後逆で表示)
テレビで放映されたので、ご覧になった方も多いでしょう。いま、△2九飛と打ち込まれたところです。
この局面、私なら一回▲1七香と逃げておきます。それで相手に有効な攻めがない(と思う)からです。
この香車を取りに行くのは、取った後の△1七龍の位置が悪い。あとで△1九龍なり△2八龍なり入り直す必要がありますが、そこで一手稼げるという寸法です。
ところが、実戦の進行は▲4五歩だったので、△1九飛成と香車を取られました。のちに、この香車を使って6筋から攻められてしまいました。
香車を渡さなければ、この攻めを喰らうことはなかったですね。
ジッと駒を逃がす手で相手を戦力不足に追い込む
▲1七香みたいに、「桂馬・香車をジッと逃げておく手」は勇気がいります。攻めに働かない「守りだけの手」に見えますし、相手に手番を渡すので、何をされるかわからない怖さがあるからです。それならば他の攻撃手を指そうか、という気になります。
しかし、将棋とは相対的なもの。
こちらの玉の守りが薄くても、それ以上に相手の戦力が不足していれば、寄せられることはありません。こちらの攻めが10手掛かっても、相手の攻めが11手掛かるのであれば、一歩先にゴールできます。
香車1枚を補充させないことで、相手を戦力不足にし、攻めを緩和する。相手の攻めをペースダウンさせれば、相対的に自分の速度は速まる。
もちろん、これはケースバイケース。
一手使って香車を逃がしたら、他の場所で痛打を喰らった、相手に自陣のキズを消されて攻めにくくなってしまった。そんなことになったら目も当てられない(笑) まあ、結局は盤面全体を見渡すことが大事ということで。
ただ、今まで無造作に桂馬や香車を取らせていた人は、「場合によっては、一手使って逃がす手もある」と知っておくといいでしょう。それだけでも、中終盤の戦い方が少し変わってくると思います。