振り飛車一筋・KYSの将棋ブログ

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将棋ソフトやAIを使った研究 評価値だけを見ていると失敗する

将棋において、ソフトやAIの活用は、すっかり日常的な行為になっています。

自分は指さないけどプロの将棋は観る──私の妻がそうですが、そういう人にとっては、観戦時の補助ツールとして。私のように、自分が指す人にとっては、研究ツールとして。

自分が使う戦法の気になる局面を解析してもらい、具体的な候補手や、有利・不利を示してもらう。その局面は有利だから踏み込んで問題ないのか、あるいは、その局面は不利だから避けた方がいいのか。

実戦に備えた予習のためにソフトやAIを使うのは、プロだけではなく、アマチュアでも普通に行われていることです。

「その局面が高評価値な理由」まで把握しないと意味がない

ソフトやAIを使った予習・事前研究は、自分にとって有利な局面を探し出すことが一つの目的になります。具体的には評価値で判断します。ソフトやAIが高い評価値を示す局面を把握して、そこに誘導できれば、勝てる可能性が高くなるわけ。
(あるいは逆に、自分にとって不利な局面を避ける研究も行う)

ただし、ここに一つ落とし穴があるので注意。

ソフトやAIを活用して、高評価値な局面を探しておくことは良い方法です。しかし、それだけではなく、「その局面は、なぜ有利なのか」という根拠までキチンと理解しているかどうか。大事な点はそこです。

一口に有利と言っても、理由はさまざまです。

  • 相手陣の急所に斬り込む手順がある
  • 押さえ込みが狙える
  • 相手の攻めを切らす「受け潰し」が狙える
  • 「堅い・攻めてる・切れない」が実現している

「この局面は押さえ込みに回れば有利」というシーンで、俺の方が有利なんだから一気に潰してやる! と攻め込んだら、押さえ込みの網が破れてヒドい目に遭うでしょう。

「相手陣の急所を衝ける手順があるので有利。だから評価値が高い」という場面で、受けの一手を選択したら、やはり有利が吹っ飛びます。

ようするに、「この局面は、なぜ有利なのか?」という理由に沿った指し手を選択しないと、有利が有利にならないのです。

ソフトやAIを使って事前研究しておくのは結構ですが、「評価値で有利と示されているから」だけでは不十分で、「この局面は、なぜ有利なのか?」までキチンと詰めておく必要があります。

上っ面の数字だけを眺めているのではダメで、その数字が算出された背景まで知っておけ、ということ。別の言い方をすると、「なぜこの局面は有利なの?」と尋ねられたときに、「評価値がそうなっているから」としか返答できないようでは甘いです。

ソフトやAIの「奴隷」ではなく自身の判断も交えて有効活用したい

また、人によって得手不得手というものがあります。ソフトやAIが「この局面は一回受けに回るのが最善」と示しても、受けが苦手な人からすれば、いやーそれはちょっと嫌だなぁ……と思いますよね。

評価値的に最善手だとしても、それを選択した結果、自分が苦手な展開に進んでしまっては、良い結果には繋がらないでしょう。実は次善手の方が勝ちやすいかもしれません。

ソフトやAIが示す通りの手順を盤上に再現するだけの「奴隷」はいただけません。自分の技量を踏まえたうえで、ソフトやAIの提示に対し、自身の判断を介入させる。それが賢い活用法ではないでしょうか。

大局観や形勢判断力が一定水準以上で備わっている人なら、ソフトやAIとは、良いお付き合いができるでしょう。具体的には、アマ有段者レベルからだと私は考えます。

級位者レベルでは、ソフトやAIの活用よりも、他にやるべきことがあるはずです。おそらく級位者では、評価値を示されたときに、「この局面で評価値がそうなっている理由」が読み解けないでしょう。であれば、ソフトやAIを使う価値はあまりないと言えます。

ソフトやAIは確かに便利なツールですが、それを有効活用できるかどうかは、使う側の技量にかかっています。結局、コンピューターが発展しても、人間やるべきことはやらなければいけないのですね。

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