本日のテーマは、「飛車先の歩の突き捨て」です。具体的には、居飛車対振り飛車の戦いで、居飛車が△8六歩と突き捨てる手について考えます。
突き捨ての目安は「飛車が中空に飛び出した瞬間」
居飛車が飛車先の歩を突き捨てるタイミングは難しいです。あまり早く突き捨てると、振り飛車に余分に歩を献上して「指しすぎ」になります。かといって、△8六歩のタイミングが遅いと手抜かれて、飛車が敵陣に侵入するのが遅れてしまいます。
居飛車は、どこで△8六歩と突き捨てるのがよいのか?
結局はケースバイケースなのですが(^^;) 本記事では一つの目安を示します。それは「振り飛車の飛車が中空に飛び出した瞬間」です。
【ケース1】振り飛車穴熊の3筋交換を咎める
具体例で見ていきましょう。
↓図は、振り飛車穴熊対銀冠穴熊の一局面です。
↑図から、振り飛車は▲3五歩△同歩▲同飛と一歩交換しました(↓図)。
振り飛車の飛車が、▲3五飛と中段に飛び出しましたよね。この瞬間に△8六歩と指すのが、居飛車としては好タイミングです。
さて、△8六歩の突き捨てに振り飛車はどう対応するか? まず▲8六同歩は、△8八歩と打たれて困ります。
△8六歩の突き捨てには▲同角と応じた方が自然です。しかし、△4四銀▲3八飛△4二角(↓図)が一例で居飛車ペースです。
【ケース2】あえて飛車先突破をさせてのカウンター
次の例です。
↓図は、相穴熊の一局面。
振り飛車は、次に▲6四歩からの飛車先突破を狙っています。居飛車はどう受けるか? ここでの正解はなんと……
▲6四歩を受けずに△5一金! これが面白い手です。振り飛車が▲6四歩△同歩▲同飛としてきたら……
振り飛車の飛車が中空に飛び出しました。ここが居飛車のチャンスで、△8六歩と突き捨てましょう。
▲6四歩を直接受けるのではなく、△8六歩の反撃を見せることで間接的に受ける手法です。居飛車党は、覚えておいて損がない筋です。
【ケース3】中飛車が5筋で動いたところを狙う
最近のプロの実戦からも一つ紹介します。
↑図から、振り飛車は▲5四歩△同歩▲同銀△同銀▲同飛と5筋で動きました。5四に飛車が飛び出したこの瞬間に、居飛車は△8六歩を決行(↓図)。
もっともこの場合、居飛車の5二金が、振り飛車の5四飛にロックオンされている点に注意。▲8六同歩△8八歩▲同角に△8六飛と飛び出すと、▲5二飛成で金を取られる手があります。
というわけで、実戦では▲8六同歩△8八歩▲2五銀△4三金……と少々ひねった順で進行しました(↓図)。
居飛車・振り飛車双方が頭に入れておくべき筋
いかがでしょうか?
3例ほど紹介しましたが、雰囲気はつかめたかと思います。
居飛車党は、「振り飛車の飛車が飛び出してきたら、突き捨てでカウンター」と覚えておけばよいでしょう。逆に振り飛車党としては、自分から動くときには、この反撃筋を検討したうえで踏み込む必要があります。参考にしてください。
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