『将棋世界』の2022年2月号に、将棋ソフト・ボナンザに関する記事がありました。ボナンザといえば、それまでの将棋ソフトの概念をくつがえした、まさに革命児ですね。
ボナンザが登場したのは2005(平成17)年でしたが、私は将棋に熱中していた時期なので、リアルタイムで「ボナンザ登場の衝撃」を体感した一人です。今回の記事では、当時のことを振り返ってみます。
アマチュア三~四段の私はボナンザにボコられた
なんか強い将棋ソフトが出てきたらしい。ネット上で話題になってる。将棋仲間から話を聞いた私は、自分でもさっそくダウンロード(=ボナンザはフリーソフト)して対戦してみました。
なんだコイツ、強い…
私はそれこそ、ファミコン時代の将棋ソフトとも対戦経験があるのですが、ボナンザ登場以前のソフトは「いかにも機械」という不自然な手が多かったです。うまく待っていれば、勝手に悪手を指して自爆してくれました。
それに比べると、ボナンザの手は「すごく人間っぽい」。まるで人間かと見紛うようなナチュラルさ、それでいて「コイツ強い」と唸らされる手が普通に出てくるのです。
終盤の切れ味も凄まじく、まったく粘れずあっという間に寄せられることもしばしば。序中盤で頑張って、なんとかリードを保って終盤に突入しても、一つ間違って即逆転 →「あああぁぁチクショーーー!!」となったことが何度あったことか(笑)
私は当時アマ三~四段程度だったのですが、もう手合い違いという感じで、ボコボコにされまくりました。
プロ棋士や奨励会三段も負け 当時は大事件だった?
ボナンザの登場は、プロ棋士の間でも衝撃だったようです。渡辺明竜王(当時)がブログで、「戸辺(※)が将棋ソフトに一発入れられた。プロ棋士もすでに数名が負けている」みたいに書いていたことを憶えています。
(※戸辺誠七段。当時は奨励会三段)
2022年の目線では、プロ棋士でも将棋ソフトに負けるのは普通の話で、驚きの欠片もありません。しかし2005年当時は、「将棋を生業とする人間がソフトに負けるなんてありえねー」みたいな雰囲気で、プロや奨励会三段がソフトに負けるのは大事件だったのですね。もはや隔世の感があります。
登場当初はまだ付け込む隙があったボナンザ
ただし、登場当初のボナンザはまだまだ完成度が低く、指し手が粗かったです。特に序盤や中盤で顕著でしたが、人間の大局観からすると、ものすごく変な手を指すことがありました。「それってこう指されたら大丈夫なん?」とこっちが指し進めると、「あっそうか」みたいに評価値がボナンザ不利に振れるといった具合で。
平気で駒損するのも特徴でした。まだ強攻するような場面でもないのに、角銀交換とかに踏み込むのは普通。勢いよく突っ込んでくるのですが、結局は駒損がたたって形勢を損ねるのが一つのパターン。さっきまで「自分の方が有利!」と主張していたはずなのに、突然「やっぱダメだったわ^^;」みたいに評価値が一瞬でひっくり返ったりして(笑)
そのように雑な部分も少なくなかったので、私でもたまに勝てました。現在のソフトには、アマチュアが付け込む隙はまったくありませんが……。