今回の記事は、2020(令和2)年1月、市民将棋大会に参加したときの大会レポ・後編です。前編・中編は↓こちら。
【予選第3局】中飛車 vs 舟囲い5筋飛車まわり
1勝1敗で迎えた予選第3局。
序盤でやり損ないがあり、早くも形勢を悪くした感じの第1図。
うーむ、どうしてこうなった(´・ω・`; ) ……と思っていると、第1図から相手は△7六銀としてきました。それが第2図。
一歩を入手しつつ、次に△8七銀成などを狙った当然の一手に見えますが、これは疑問手。すかさず▲5六飛と頭上の重しを除去して、ヨリを戻すことに成功。
以下、△8七銀不成なら▲7七角、△8七銀成なら▲6六角という具合でかわしておけば、逆に相手の銀が進退の不自由な駒になっています。これは私の方が良いでしょう。
相手も失着を悟ったようで、▲5六飛に△6五銀と戻ってきましたが、▲8六飛△8二飛と進め、浮き飛車の軽い形にできて、こちらが十分な形勢に。以下は相手が暴発して攻めてきたところをキッチリ返り討ちにして、これで2勝1敗に。
戻って、第1図から△7六銀の突進ではなく、中央を厚くする△3三桂や△4三銀なら、依然として私が苦しかったと思います。
補足ですが、本譜△7六銀に対して▲7八金と受ける(仮想図A)のは手堅いようで逆に危険。
次に▲5六飛と歩を払った瞬間に、△8七銀成!(仮想図B)を喰らってヤバいです。
この形は、8七の地点を直接受けるのではなく、あえて引っ張り込んで逆用するのがスジです。
昼食の弁当はとても良かった
第3局まで終えたところで昼食の時間です。大会の参加費には昼食代が含まれており、お弁当とお茶が配られました。
お弁当は、なんと握り寿司。しかもネタがけっこう豪華です。ホタテやイクラ、鯛まで入っていました。巻物も、かんぴょう巻ではなく鉄火巻でしたし。
将棋大会に参加していると、この手の握り寿司弁当が支給されることは珍しくないのですが、今回のものは過去イチだったと思います。
【予選第4局】石田流美濃 vs 矢倉もどき変則囲い
さて、昼食を終えて第4局。
2勝1敗、まだまだ背水の陣が続きます。序盤早々、相手が変な形にしてきました。
アレか? そんなに石田流から7筋を攻められるのが怖いのかっ!?
相手の変則的な構えに対して、こちらは自然な形に組み上げます。第2図は、まだ駒が本格的にぶつかっていませんが、作戦勝ちを通り越して、すでに私が優勢の局面。
相手は端棒銀風味ですが、こちらの攻撃体制が整っているので、もう間に合いません。当然、▲6五歩と先攻します。
△6五同桂の展開を考えていましたが、まさかの手抜いて△3三桂。えー、それはさすがにアカンでしょ……。以下、▲6四歩△同銀▲7四飛△6二飛……と気持ちよく進めて第3図。
ここから▲8四飛△8二歩▲6三歩でもいいですが、もっと欲張りたいところ。長手順になりますが、▲6五歩△同桂▲7一飛成△6一歩▲6五桂△同銀の瞬間に▲6二龍(第4図)。
6筋で銀桂総交換になる一歩手前で、▲6二龍と根元の飛車を外します。以下、△6二同歩に▲6五銀と取れば、銀の丸得+陣形差で必勝です。あとはそのまま一方的に押し切って、これで3連勝。
【予選第5局】三間飛車穴熊 vs 三間飛車金無双
いよいよ予選最終局。この時点での成績は、私を初戦で負かした人が4勝0敗。3勝1敗が私とあと一人。
というわけで、最終局は3勝1敗同士の戦い。勝てば決勝トーナメント進出、負ければ予選敗退というわかりやすい図に。
戦型は相振り飛車。
私の穴熊志向を見てから、相手は金無双に組んできました。進んで第1図。
うーん、この図は私がちょっと欲張りすぎています。穴熊に組んだうえに、8・7・6筋の歩を伸ばしたり交換したりで、手数をかけすぎです。あ、8五歩はいったん交換したものの、△8四飛と回られて▲8五歩の打ち直しを余儀なくされました( ノД`)
おかげで左銀の進出が遅れています。左銀が活用できないと、6筋から金無双を攻略するのは難しい。この形ならば、6筋の歩は省略し、6六角~7七桂から端攻めの構想の方がよかったです。
相手の角が5五にいますが、これは1三から転換してきたもの。こちらの左銀の遅れを咎められた感じです。
第1図からは▲5六歩と角を追い払いたいのですが、△4四角と引かれます。飛車の横利きも消えてしまうので、次に2筋交換から端攻めを狙われるのが嫌でした。が、左銀活用の時間を稼ぐために、そう指した方がよかったか。
そして、相手が先攻してきました。左銀が遊んでいるこちらは、正面切っての攻め合いには行けないので、方針は「受け」。
ですが、受け一方ではなかなか勝てません。▲6四歩△同歩▲6五歩の継ぎ歩攻めで、相手陣に嫌味をつけておきます。相手も継ぎ歩で攻めてきたのが第2図。
が、この図は私が損しています。
▲6四歩△同歩▲6三歩△同金直▲6五歩と、当たりを強くしての継ぎ歩攻めにするべきでした。相手になるべく歩を渡したくなかったのですが、一歩余分に渡したせいで負けるのなら、そもそもこちらが悪かったということです。進んで第3図。
こちらが桂得にはなっていますが、しばらく攻めのターンが回ってきそうにありません。第3図から▲2八銀△3七歩成▲同金左△3六歩▲2七金寄△1六歩と進んで第4図。
この後、遅まきながら▲5六歩と突きましたが、当然ながら△2八角成と切られてヤブヘビに。まだしも、得した桂馬を4六に投入して角筋を止めた方がよかったかな。
しばらく進んだ第5図は、もう相手の攻めが切れない展開。
となると、うまく手を稼いで反撃に転じたいのですが、しかし相手玉を攻めようにも、▲6四歩の取り込みや▲5五桂が先手にならないので厳しい手がありません。先ほど一歩ケチって▲6三歩と叩かなかった罪です。つーか、左辺の駒が遊びまくっていて勝てる気がしない。
ついに急所の金に直撃弾が飛んでくる形に。▲1七金寄と逃げれば△4七桂成なので、金は逃げられません。仕方なく▲2五角と根っこの飛車を攻めましたが、△2七桂成▲同金△1七銀!(第7図)が好手。
あー、これはやられた、まったく読んでいなかった。▲1七同金と取るしかありませんが、△3七飛成▲2八銀△3八龍▲2九桂に、△6八龍と冷静に補充されて、以下押し切られました。無念。
戻って第6図。ここではいい手がありました。
第6図から▲1八角。
「こういう手があるのでは」と感想戦での相手の意見。なるほど▲1八角、これは攻防一体の良さげな手です。
金無双で穴熊を攻めると、角を切ることがよくあります。角をもらった穴熊側は、金無双玉のコビンのラインに角を据えることを常に考えておくべき。この場面でも、まさにそれが当てはまっていました。
将来の夢は子どもたちに負かされること
というわけで、最終成績は3勝2敗。予選すら突破ならずでした( ノД`) 実戦自体が数年ぶりでしたから、この成績は妥当かもしれませんが、もう少しなんとかならなかったものか……。
ただ、力の衰えを痛感する結果ではありましたが、感想は「楽しかった」の一言です。また機会があれば参加しようかな。
もし将来、娘や甥っ子、姪っ子が将棋を指すようになってくれたら、一緒に参加したいです。そして誰かと決勝の舞台で対戦し、私を負かしてほしい。子どもの成長に「強くなったなあ」と目を細めながら、老兵は潔く散る。そのあと「俺、今日は帰らねえから」と妻に伝え、夜は一人で酒を飲みに行き、嬉しさと悔しさを噛み締める。
……という妄想を語ったら、妻には「はんっ」と鼻で笑われました(笑)
長文になりましたが、大会レポは以上です。お付き合いいただき、ありがとうございました。