振り飛車一筋・KYSの将棋ブログ

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2020年王位戦第2局 木村王位 vs 藤井七段の逆転劇

今回の記事は、プロ棋戦の観戦記(考察)です。
取り上げるのは、2020(令和2)年7月14日、王位戦7番勝負の第2局・木村一基王位 vs 藤井聡太七段。
藤井七段が圧倒的不利な局面から逆転し、タイトル獲得に大きな弾みをつけた、あの将棋です。

まあ、「藤井マジック」とか「鬼神のような終盤力」なんて言葉が飛び交ってましたが、それはさすがに過剰な表現かと……。
藤井君が指した手なら何でも称賛されるな、最近は。

その日、私は酒を飲んでから娘の相手をしていたのですが、妻がスマホで中継を見ており、こまめに形勢を教えてくれました。

妻「木村先生がめっちゃリードしてるらしい」

あーそうなん。じゃあこのまま押し切るでしょ。
さーて、娘と風呂に入ってくるかー(^^)
ところが、長い風呂から戻ると、

妻「なんか藤井君が逆転勝ちしたけど」

めっちゃリードじゃなかったの!?
酔いがいっぺんに醒めました(笑)
あわてて妻にスマホを見せてもらい、将棋盤を出してきて棋譜を並べてみました。

感想
どこで形勢がおかしくなったのか、よくわからん……。
木村王位も釈然としないのでは。

 

そこまで木村優勢ではなかったのでは……


が、冷静に見てみると、そこまで木村王位が大きくリードしていたわけではないようですね。
たとえばこの局面、ネット中継では「木村が大優勢!」みたいな雰囲気だったらしいですが……。

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ネット上では「木村大きくリード」とされていた局面だが


実際はどうなんでしょうね。
というのも、

① 木村の飛車が、1七の僻地にいるニート
② 木村玉の守りが、8八銀・7八金の壁形(悪い形)
③ 攻め駒がギリギリの3枚(=盤上の成香・手持ちの飛車+金)


木村側にもけっこう悪条件があるので、ネット中継が言うほど大差ではなさそうです。
さて、数手進んだのが↓の図。

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「成香どっか行って」の歩打ち


まだ優勢だけど、これ一筋縄じゃ行かないなあ。どう攻めるんだ?
実戦では、木村王位が▲4六歩△同銀▲5四桂と進めて↓の図。

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急所に刺さった感の桂打ちだが


ここから△6三歩▲4二桂成△同玉▲3四金△3二銀打……と先手で龍を弾かれ、なんかモタついてる雰囲気。
以降もゴチャゴチャやっているうちに、形勢がひっくり返ってしまいました。

他に候補手はあった? ①▲5三桂


もしかすると、木村王位が▲5四桂と打った↓の局面が、すでに容易ではないのかもしれません。

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この局面が言うほど優勢ではない?


いや、木村優勢は間違いないのですが、じゃあどうやって勝ち切る? と問われると、明確な答えが浮かびません。
実際、木村王位も間違えたわけで……。

▲5四桂以外に候補手を探すとすれば、何が考えられるか?
この局面、私だったら▲5三桂の攻めを読むと思います。

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5四ではなく5三から桂馬を打つ手はどうか?


変化①
▲5三桂に対して△6三歩と成香を外せば、これは木村勝ちでしょう。
一例ですが、▲4一桂成△同金▲3二銀△5二銀▲4一銀成△同銀▲3二金△5二銀打▲7二金。

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右方向から絡み、一転して挟み撃ち


↑の図は、藤井玉を挟み撃ちにして、次の▲4二歩がめちゃくちゃ厳しい。
これは勝てるでしょう。

変化②
また、▲5三桂に対して△同角と取るのも木村勝ち。
▲同成香△同金▲3三角△4二桂▲3二金……みたいな要領で、一気に藤井玉を仕留めることができます。

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4一と4二を同時に受ける手がない


変化③
ところがどっこい、▲5三桂に対して△同金と取られると、これは難しい。
▲5三同成香△同角と進んだ↓の図ですが、

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この局面で次の手が難しい


ここから▲5四金でも▲3二金でも、△5二銀打とされると、押し切れるか微妙。
お互いに角金銀を打ち換えあって、千日手になりそうな雰囲気も。

というわけで、私が考えた▲5三桂では難しいようです。

他に候補手はあった? ②▲6一金


再び、木村王位が▲5四桂と打った↓の局面。
これじゃなくて、他に手はないのか?

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この▲5四桂以外に手はないか?


▲5四桂ではなく、▲6一金! というアクロバティックな手はどうだ!

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金のタダ捨て!


これは△6一同玉と取るしかないですが、そこで▲5三桂と打つ。

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相手玉を6一にズラしてから▲5三桂


△5三同金なら▲4一龍で詰み。
△7一玉と逃げるのは▲4一桂成で押し切れる。

ですので、↑の図からは△5三同角の一手ですが、▲同成香と取っておく。
放っておいて、次に▲4二成香が回れば勝ち。
かといって、△5三同金なら▲4一龍があります。

ところが、△3二銀打と龍を弾かれると、どうやら息切れしそうな……。

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先手で龍を弾かれる


うーん、これは変調だなあ。
優勢な側が選ぶ指し方ではないです。
▲6一金もダメですね。

もっと前の局面でわかりやすく勝てる順はなかった?


……という感じで、↓の図から▲5四桂(木村王位が実際に指した手)・▲5三桂・▲6一金は、いずれもけっこう難しいことがわかりました。

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この局面からの攻めをいろいろ考えたが難しい


となれば、そもそもこの局面がどうなの? という話になってきます。
報道などでは、「125手目の▲4二歩が悪手で敗着」とされていました。
が、それは全体から一部分を切り取って考えたときの話で、実際には、その少し前から木村王位が変調だったと思います。

もっと前の局面で、木村王位がわかりやすく勝てる手はなかったか?
私もいろいろこねくり回して考えたのですが、最初に載せた↓の局面。

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もう少し前に戻って考える


この局面から△4四角▲3一飛△4一銀までは必然だと思われます。
問題はそのあと。
実戦では▲2一飛成としたため、△6二歩と打たれて面倒なことになりました。

▲2一飛成ではなく、すぐ▲4六歩と指すのはどうでしょう。

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私なりの修正案 すぐに歩を突く


理想の順としては、△5四銀▲4五歩△同銀▲4七飛。

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こうなれば飛車を活用できる


こうやって、端っこでニートしていた飛車を活用し、盤面の中央を占める藤井側の角と銀に働きかけていく。
これで実際、藤井七段の対応が難しいのでは。

変化①
たとえば、銀取りを防いで△4六桂などとやるのは、▲同飛△同銀▲5四桂△6二歩▲3二金で、あっという間に木村勝ち。

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受けなし。△5三銀なら▲4二金△同銀引▲5二金の頭金


変化②
桂馬は渡せないとばかりに△4六銀打とするのも、▲同飛△同銀▲6一金!△同玉▲5二銀! が好手順。

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3枚の駒が連動したピッタリの攻め


以降の手順は省略しますが、↑の図は明快に木村勝ちです。

もちろん、他にもたくさん変化はあって、ここで示した通りには進まないかもしれません。
が、どう変化しても、割とわかりやすい展開になると思うので、木村王位が間違える可能性は少ないのではないでしょうか。

私の考察は以上です。