振り飛車一筋・KYSの将棋ブログ

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相振り飛車で金無双に端攻め(2) 細い攻めをつなげるテクニックを解説

相振り飛車のセオリーの一つは端攻めです。前回の記事では、金無双に対する端攻めを取り上げました。具体的には、↓図からの攻め手順を解説しました。

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ここからの手順は相振りでは必修

↑図から▲9五歩△同歩▲9三歩△同香▲8五桂△9四香▲9三歩。二度の▲9三歩の垂れ歩が手順です。

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吊り上げた香車の裏側から歩を垂らす

ここから△9一銀▲9二歩成△同銀▲9五香!△同香▲9三歩(↓図)。

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9三の地点は先手の勢力勝ち

▲9五香と香車を捨てて一歩入手し、その歩を▲9三歩と打つ。これがテクニックで、定跡書などでは「これにて後手潰れ」とされている図です。

前回の復習はここまで。
今回の記事は、この先の変化を説明していきます。

知らないと難しい 攻めをつなげる軽妙な一手とは?

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再掲・▲9三歩と打った場面

さて、定跡書などでは「後手潰れ」とされている局面ですが、△9一歩と受けられると一筋縄ではいかないのです。

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この△9一歩がしぶとい受け

とりあえず、▲9二歩成△同歩と銀を取りますが……

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銀香交換の駒得を果たしたが、先手は歩切れ

ここでどう攻めるか?
歩を持っていれば▲9三歩と打って楽勝ですが、あいにく歩切れ。といって、歩を補充できる場所もない。銀だけの持ち駒でどう攻め続けるか、意外に難しく感じますよね。

では、正解を申し上げます。これは知っていないと浮かびにくい手なので、ぜひ覚えておいてください。次の一手は▲7三桂成です。

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この桂捨てを知らないと攻めあぐむ

この桂捨てが、一歩を補充しつつ相手陣を乱す軽手。知らなかった人には参考になると思います。

▲7三桂成に対し、後手は玉・桂馬・金のどれで取るか? 順に解説していきます。

① △7三同玉の変化 → 合わせ歩で飛車角を活用

まず①△同玉。
これには、入手した一歩を▲8四歩と打つのが好手(↓図)。

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この▲8四歩が飛車と角を最大限に生かす手

△同歩の一手に▲同飛と出て、次の▲8一飛成を狙います。それを受ける△8三歩には、▲7四銀と上からかぶせて攻めが続きます。

▲7三桂成に△同玉の顔面受けでは、ちょっと凌げないようです。

② △7三同桂の変化 → 軽い飛車浮きで攻めがつながる

続いて、▲7三桂成に対して②△同桂。これは△6五桂の味で頑張ろうというものですが……。

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玉と金が上ずらない取り方だが……

まずは当然、▲7四歩と打ちます。
△6五桂と跳ねて逃げますが……(↓図)。

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▲7三銀と打ち込みたいが、それでは戦力不足になる。一工夫ほしい

ここで軽い好手があります。
それがフワッと▲8五飛と浮く手です(↓図)。

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フワッティーな飛車浮き。やはり知らなければ思いつきにくい手

桂香両取りですね。
桂馬を取れば▲8五桂、香車を取れば▲7六香という要領で、7筋に駒を足し算していく手がわかりやすい。場合によっては▲7五飛と寄って、さらに7筋に足し算することも可能。7筋に攻め駒を増やしてから▲7三銀と打ち込めば、後手陣は壊滅します。

というわけで、▲7三桂成に△同桂の変化球でも、凌ぐのは難しいようです。

③ △7三同金の変化 → タタキの歩と銀捨てのコンボ

よって▲7三桂成と捨てる手には、③△同金と応じるのが最善(↓図)。

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この変化が後手は最善。一見、攻めの取っ掛かりがなさそうだが

↑図からどう攻めるか?
難しいようですが、▲7四歩と打つのが攻めをつなげる軽手です(↓図)。

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タタキの歩で金を上ずらせるのは攻めの基本

この▲7四歩、狙いがわかりにくいですが、△同金と取れば▲6一銀と捨てる手(↓図)を見ています。

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少々強引だが、飛車成りを作るための銀捨て

△6一同玉に▲8三飛成と成り込めば、▲7四龍の金取り・▲8一龍の桂取り・▲9二龍の歩補充など、さまざまな手が生じて受け切るのは困難です。

↑図の▲6一銀捨てには、取らずに△8二玉と逃げる方が粘れるかもしれませんが、▲5二銀不成と取っておけば、駒割りは金銀と桂香の交換。さすがに先手いいでしょう。

戻って、▲7三桂成△同金▲7四歩に△8四金とする変化(↓図)も考えられますが……

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▲7四歩のタタキを取らずに△8四金とかわした変化図

▲同飛!△同歩▲同角と、飛車の方を捨てるのがわかりやすいです(↓図)。

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後手の持ち駒は受けに適さないものばかり

↑図は▲7三金以下の詰めろですが、それを受けても▲9五角と香車を補充し、7~8筋に足していく手があります。攻めが切れる心配はないでしょう。

【まとめ】知らなければ思い浮かばない手が多い

解説が複雑になってしまいました(^^;) まとめましょう。

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本日のテーマ図。次の一手は何だったでしょうか?

↑図からは、▲7三桂成と捨てるのが攻めをつなげる好手。

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この▲7三桂成と捨てるのが眼目の一手

▲7三桂成に対して、

  1. △同玉には▲8四歩と合わせる
  2. △同桂には▲7四歩△6五桂▲8五飛のフワッティー
  3. △同金には▲7四歩のタタキ~▲6一銀捨てのコンボ

最初の▲7三桂成もそうですが、②の変化・▲8五飛や、③の変化・▲7四歩~▲6一銀捨てなど、けっこうトリッキーな順が多いです。こういう手は、まともに考えても浮かびにくいので、知識として知っておくべきでしょう。みなさんの参考になれば幸いです。

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