振り飛車一筋・KYSの将棋ブログ

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相振り飛車で玉側の端歩は突かない方がよい理由

相振り飛車で悩むのが、「玉を囲った側の端歩は突くべきか否か?」です。
具体的には、↓図のような場面で▲1六歩と突き返すべきか、それとも手抜くべきか。

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この端歩は受ける? 受けない?


居飛車対振り飛車(対抗形)なら、「玉側の端歩は突かれたら突き返す」がセオリーなので悩まないでしょう。
また、相振りと“逆”の矢倉戦では、「矢倉囲いに端歩を突くな」の格言もあり、やはりセオリーが存在します。
しかし、相振りでの端歩は格言やセオリーがなく、判断が難しいですよね。

あくまで個人的な意見ですが、相振りでは玉側の端歩は突かない方がよいと思います。
というのも、△1四歩に▲1六歩と突き返すと、以下のデメリットが発生するからです。

① 差し引き0手で、相手に端攻めの権利を与える
② 端攻めされたときに▲1七同桂と取れない

 

 

端を突き返すデメリット① 0手で端攻めの権利を与える


まず、「① 差し引き0手で、相手に端攻めの権利を与える」のデメリットから説明しましょう。
↓図は、相手が△1四歩と端歩を突いてきたところ。

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端を打診されたところ。よく出そうな局面


これに対して、▲1六歩と突いたとします。
お互いが1筋の歩を突いたので、差し引き0手ですね。

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お互い端に一手ずつ費やしたので、差し引きは0手


しかしこの交換、私は好みではありません。
なぜか?

「相振りでは端攻め」は一つのセオリーです。
その端攻めの権利を、差し引き0手で相手に発生させているのがシャクだからです。

△1四歩と突かれた場面で、端を放置して▲8六歩と突いてみます(↓図)。

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端を無視して左辺を進めた図


当然ですが、↑図は1筋で歩がぶつからないので、端攻めが発生しません。
また、相手玉は8筋方面にいますから、この△1四歩は玉の逃げ道を広げる効果もない。

つまり、△1四歩と端を突いてくる手は、こちらが突き返さなければ「相手に効果が発生しない」のです。
別の言い方をすると、△1四歩という一手は単独では効果が薄く、こちらが▲1六歩と突き返すか、あるいはもう一手△1五歩まで伸ばして初めて意味が出てくるわけです。

単独では効果が薄い△1四歩に対し、▲1六歩と突き返して相手にわざわざ効果を与えるのは腹立たしい。
これが、私が端を突き返さない理由①です。

端を突き返すデメリット② 端攻めを▲1七桂と取れない


続いて、端歩を突き返すデメリット②「端攻めされたときに▲1七同桂と取れない」について。
実際に端攻めされた図を見ながら説明します。

金無双は「端歩均衡型」から端攻めされると潰れてしまう


先手が金無双に組んだところ、相手が端攻めしてきました。
↓図は、△1四歩▲1六歩の「端歩均衡型」から、△1五歩▲同歩△1七歩と垂らされたところ。

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金無双に対する端攻めは常套手段


この垂れ歩に対して、▲1七同桂はないですね。
△1六歩と打たれて桂損になりますから。
というわけで、▲同銀と▲同香のどちらかですが、ここでは▲1七同銀と取ってみます。

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銀で垂れ歩を除去する


ここから△2五桂と飛んでくるのは、▲2六銀とかわして攻めにならない。
というわけで、△1七角成とぶった切ってくるのが定跡化された一手です(↓図)。

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この角切りされた局面が問題


この角切りに対し、▲同桂はやはり△1六歩と打たれてまずい。
よって▲同香と取りますが、これには△1八銀の追撃が厳しい一手(↓図)。

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香車の裏側から銀打ちが厳しい


以下、▲2六角△2五桂……のように進み、受けが難しいです。
この展開は、反撃のターンがなかなか回ってきません。

「端歩詰められ型」なら▲1七同桂と取る裏ワザがある!


今度は、△1五歩▲1七歩の「端歩詰められ型」で端攻めを受けてみます。

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「端歩詰められ型」だと何が違ってくる?


この垂れ歩、
①▲同香は△2五桂と跳ばれて、次に△1八歩~△1九歩成を狙われます。
②▲同桂と取るのも、△1八歩▲同香△1六香と走られ、次に△2五桂▲同桂△1八香成を狙われて苦戦です。

というわけで垂れ歩の除去は③▲1七同銀ですが、そこで先ほど同様、△1七角成と切ってきたのが↓図。

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先ほどは▲同香と取るしかなかったが……


↑図で▲同香は、やはり△1八銀と打たれて苦戦。
ここでは△1六歩と打たれない点を活かして、▲1七同桂が成立します。
これが「端歩均衡型」と「端歩詰められ型」の違いです。

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△1六歩と打たれないので、▲同桂が成立する


↑図から攻め続けるなら△1八歩▲同香△1六香……くらいでしょうが、その図は先手玉にまだ余裕があります。
そこで反撃に出ればよいでしょう。

△1五歩▲1七歩の「端歩詰められ型」は、「端歩均衡型」よりも差し引き2手多く指せます。
つまり、左辺での反撃態勢がある程度整っているはずなので、一方的に攻められて負かされる展開にはなりにくいはずです。

居飛車対振り飛車ではセオリー通り「端歩均衡」で

 

① 差し引き0手で、相手に端攻めの権利を与える
② 端攻めされたときに▲1七同桂と取れない


以上が、相振りで端歩を突かない方がよいと思う理由です。

もちろん、この考え方が絶対と言うつもりはありません。
将棋というものはケースバイケースですから、端歩を受けた方がよい場面も、もちろんあります。
が、基本的には、玉側の端歩を手抜いて左辺の攻撃態勢構築に手を回した方がよいと考えています。

さて、ここまで読んだ方は、以下のような疑問を抱くかもしれません。

①②の理由は、居飛車対振り飛車の対抗形でも当てはまるのでは?
なら、対抗形でも美濃囲いの端歩は突かない方がいいってこと?


いいえ、対抗形では話が違います。
対抗形では、セオリー通り「玉側の端歩は突かれたら突き返す」べきでしょう。

たとえば先ほど、①の理由で、「△1四歩という一手は単独では効果が薄い」と書きました。
では居飛車対振り飛車でも、△1四歩は単独では効果が薄いのか?
↓図をご覧ください。

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この△1四歩には100人中99人が▲1六歩と指すはず


居飛車から△1四歩と突いたところですが、これはこの一手でじゅうぶん効果があります。
具体的には「玉の逃げ道が広がる」ですね。
将来的に、△2二玉~△1三玉と上部に脱出する手や、2四の地点から△1三玉と戻るような手があります。

相振りでは相手玉は8筋方面にいますから、△1四歩が終盤での玉の逃げ道を広げる効果は、ほとんどありません。
(絶対ないとまでは言えませんが)
しかし、相振りと違って対抗形では相手玉が2~3筋にいるので、△1四歩は単独でも効果があるのです。

その他、△1四歩には「将来、振り飛車から▲1五桂の攻めを防ぐ」効果もあります。

そして仮に△1五歩と突き越されてしまった場合、居飛車玉の逃げ道はさらに広がります。
その場合、終盤戦で大きなアドバンテージを居飛車側に与えてしまいます。
ですから、対抗形では「玉側の端歩は突かれたら突き返す」でよいのですね。

対抗形と相振りでは、やはり端に対する考え方が違います。
そのあたりの参考になれば幸いです。


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