相振り飛車において、端攻めは一つのセオリーです。端攻めの知識・テクニックがないまま相振りを指すのは、それだけで攻撃力半減と思ってよいでしょう。
今回~次回の2回にわたり、相振りでポピュラーな囲い・金無双への端攻めを解説します。
今回は「端攻めの基本の流れ」なので、級位者向けです。振り飛車党の有段者ならば、常識といえる内容。ただし、最後の方では有段者でも手こずるかもしれない内容を書いているので、ぜひご覧ください。
端攻めは「どうやって歩を手に入れるか?」から始まる
金無双への端攻めに必要なアイテムは「持ち歩2枚」です。いくら飛車や香車、桂馬を端に集中させたとしても、歩という潤滑油がなければ端攻めはできません。
つまり端攻めとは、「実際に端で開戦したところ」ではなく、「どうやって歩を手に入れるか?」という段階から始まっているのです。
「持ち歩2枚をどうやって手に入れるか?」ですが、三間飛車が比較的わかりやすいので、ここでは三間飛車で説明しましょう。まず、7筋で一歩交換します(↓図)。
歩交換したら▲7六飛と浮いて、次は▲8六歩~▲8五歩と8筋を伸ばします。それから▲8六飛と転換し、▲8四歩(↓図)で2歩目の交換。
7・8筋で歩交換するので、持ち歩が2枚になるわけですね。
角と桂馬は端をにらむポジションへ配置
さて、歩を手に入れた後は、角と桂馬を動かします。▲6六角~▲7七桂と、端を狙うポジションに駒を配置して準備完了(↓図)。
この「持ち歩2枚」と「▲8六飛・▲6六角・▲7七桂」という配置が端攻めの理想形なので、知らなかった人は覚えておきましょう。
ちなみに、今から解説する端攻めに銀は絡んできません。「攻めは飛車角銀桂香」という格言もありますが、この局面は例外ですね。
級位者は必見! 端攻めの手順を丁寧に解説
それでは、端攻め基本図からの指し手を解説していきましょう。
まずは端攻めの基本、▲9五歩△同歩▲9三歩(↓図)です。手持ちの歩1枚目をここで投入します。
端攻めの基本・9三に垂れ歩
これに対して△9三同桂は、▲9四歩と打たれて桂馬を取られてしまいます。△9三同香(↓図)がもっとも自然です。
ここから▲8五桂と桂馬を跳ね、△9四香と逃げたら▲9三歩(↓図)。この二度目の▲9三歩を打ちたいがために、持ち歩2枚が必要なのです。
さて↑図、次に▲9二歩成を狙っており、後手としてそれは許せません。▲9二歩成を受ける唯一の手は、△9一銀(↓図)です。
さて、先手は持ち歩がなくなりましたが、ここからどう攻めるのでしょうか? これは知識として知っておかないと浮かんでこない手順なので、知らなかった人はぜひ覚えてください。
まず、▲9二歩成△同銀と歩を成り捨ててから、▲9五香!と香車を捨てます(↓図)。
そして、香車を捨てて入手した一歩を▲9三歩と打つ(↓図)。
これで9三の地点は、先手の方が駒の枚数が多くなりました。△9三同桂・△9三同銀いずれも、▲9三同桂成で突破できます。かといって後手がこのまま放置しても、やはり▲9二歩成で突破できます。
以上が、金無双に対する端攻めの基本です。ポイントは以下の二つ。
- ▲9三歩の垂れ歩が二度出てくる
- ▲9五香と捨てて一歩入手し、それを▲9三歩と打つ
定跡書などで「後手潰れ」とされている局面 本当にそう?
さて、ここから少しだけ有段者向けの内容。▲9三歩の局面を再掲します。
定跡書などでは「これにて後手潰れ」と書かれていますが、本当でしょうか? もし△9一歩(↓図)と受けられたら、どう攻めますか?
ひとまずは、▲9二歩成△同歩(↓図)と銀を頂戴しますよね。
この局面、歩を持っていれば▲9三歩と打って楽勝ですが、あいにく歩切れ。といって、歩を補充できる場所もない。銀香交換の駒得ですが、持ち駒が銀だけで、どう攻めを継続させればよいのでしょうか?
……については、次回の記事に続きます。有段者の方は、考えてみてください。