振り飛車一筋・KYSの将棋ブログ

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振り飛車党の新たな星・佐藤天彦九段はNHK杯準決勝で惜敗

振る? 振るの? 振っちゃう?

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おお~


振ったぁー!!


2021(令和3)年3月14日放送のNHK杯準決勝、佐藤天彦九段稲葉陽八段との対局で、またまた振り飛車(三間飛車)を採用してくれました。
振り飛車党の私、大歓喜。
先日のA級順位戦最終局(vs 斎藤慎太郎八段)では、相居飛車だったので、今回も振らないのではとハラハラしました。

今回の記事では、この一局を振り返ります。

 

最近流行りの三間飛車には左美濃で対抗するのが有力視


三間飛車の佐藤九段、居飛車が持久戦模様と見ると、△3五歩と石田流への組み替えを明示しました(↓図)。

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△3五歩から石田流に組み替えるのは、昔からあるクラシックな手法


対して稲葉八段、居飛車穴熊ではなく、左美濃に囲いました。
これが最近流行りの手法です(↓図)。

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左美濃の余地を残すために、序盤で9筋の端歩も突き合っておいた


この手法の狙いは、素早く囲いを完成させて戦闘態勢を整え、▲6八角~▲4六銀などの順で石田流を圧迫することです。
居飛車穴熊に組もうとすると、どうしても手数が掛かって、その間に石田流にじゅうぶんな態勢を許します。
そうならないよう、囲いは手早く左美濃で済ませ、さっさと反発するのがポイント。

銀交換が実現 振り飛車は4筋をどう受けるか?


さて、▲6八角~▲4六銀の進出で石田流を圧迫する順をチラつかせる稲葉八段。
佐藤九段は▲4六銀と出られる手を嫌って△4五歩と突きましたが、稲葉八段は▲4六歩と反発して戦いが始まりました。

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△4五歩と突いた手を逆用しにいく。△4六同歩は▲同銀で居飛車成功


以下、△3三桂▲4五歩△同銀▲4六銀△同銀▲同飛……と進み、銀交換が行われた↓図が第一のポイント。

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次に▲4一飛成がある


振り飛車は、とりあえず4筋を守らないといけませんが、どうすべきか?
ここで佐藤九段も小考していましたが、候補手は三つです。

  1. △4五歩
  2. △4四歩
  3. △4三歩(実戦の進行)


順に考察しましょう。

① △4五歩は▲4八飛とされると不満?


テレビを観ていた私は、①△4五歩だと思っていました。
以下、▲2六飛なら△6二角(↓図)としておいて、次に△5四歩~△3六歩を狙う感じ。
これでいい勝負だなあと。

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こう進めば振り飛車は角の捌きに目途がつく


ところがどっこい、後で考えたのですが、△4五歩には(▲2六飛ではなく)▲4八飛とされる手がありました(↓図)。

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居飛車は次に▲3六歩や▲4四歩、▲2二銀など狙いが多い


↑図では、△3六歩と突く手がありますが、それには▲3五銀と打たれます(↓図)。

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6八角の効きをヒモのように使って▲3五銀と打つ


これで振り飛車不利というわけではなく、難しいとは思います。
が、このあと振り飛車の飛車は中段でウロウロしそうなのに対し、居飛車の飛車は▲4五飛と捌く余地があります。
佐藤九段は、そういう展開を不満とみて①△4五歩は選ばなかったのでしょう。

② △4四歩は▲2六飛と戻られて後手を引く


では、②△4四歩はどうか?

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△4五歩ではなく△4四歩と控えて打つ手は?


あとで△4五桂や△2五桂と跳ぶ余地を残した手ですね。
先ほどのように▲4八飛と下がるなら、△2五桂と跳ねておいて、振り飛車が悪くないと思います(↓図)。

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この桂跳ね、①△4五歩と打つ変化だと▲4五飛と出られるので成立しない


ところが、(▲4八飛ではなく)▲2六飛とされると、次に▲3六歩と突かれる手があるので後手に回ってしまいます(↓図)。

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次の▲3六歩△同歩▲3五歩をどう受けるか? また受けに回らないといけない

 

①②が思わしくないため消去法で③△4三歩になったと推測


というわけで、①△4五歩も②△4四歩も思わしくないため、佐藤九段は半ば消去法的に③△4三歩を選んだと推測します。
これも▲3二銀みたいな手があるので怖いですけどね(↓図)。

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以下、△4四飛▲同飛△同歩と進むだろうが、あとで▲4三歩の垂らしのような手があるので居飛車ペースか?


しかし、消去法で手を選ばされるということは、すでにペースを握られているのではないでしょうか。
つまり、銀交換が実現した場面では居飛車がうまくやったと。

振り飛車の代替案 素直に歩交換しておく


プロレベルなら均衡を保てるでしょうが、私のようなアマチュアの振り飛車党にとっては、ちょっとツラい形ですね。
こういう展開にならないよう、振り飛車はどこで変化するか?
考えたいのは、まだ戦いが始まる前、稲葉八段が▲1六歩と突いた局面(↓図)。

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▲2六飛と浮いたときに△1五角とされないようにする。俗に言う「居飛車の税金」


▲1六歩に対し、佐藤九段は△1四歩としましたが、この端歩の突き返しは不要なのでは……。
実際、この端歩は最後まで活きませんでしたし。
代えて、△3六歩▲同歩△同飛▲3七歩△3四飛と歩交換しておくのはダメだったのか?(↓図)

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居飛車が歩交換を受けてこなかったので、素直に歩交換した


この形で▲2六飛と浮くと、すぐ決行するかどうかは別にして、△3八歩という垂れ歩があります(↓図)。

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▲3六飛とぶつけて飛車交換の決戦か、▲4八銀と受けて▲2八飛~▲3八飛で歩を取りに行くか


これはこれで難しい形勢ですが、うかつに▲2六飛とは浮けないですね。
そうなると、今回の実戦のように居飛車が4筋から反発しても、▲4六飛という形がないので話が全然違います。
少なくとも、私のようなアマ二段前後の振り飛車党なら、この方が力を出せそうな気がします。

序盤の考察はここまでにしますね。

終盤手前・△5七銀の打ち込みではなく△5四金は?


さて、あと一つ考察したいのは、終盤戦に差し掛かるあたりのところ。

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居飛車がペースを握っていたが、振り飛車が盛り返してきた。次の一手は?


振り飛車側の佐藤九段、↑図で△5七銀と打ちました(↓図)。

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▲同金や▲同角と取ってくれれば△同桂不成で振り飛車成功だが


うーん、正直これは「えっ」という感じ。
こういう場面でゴリゴリな手は、うまくいかないのが相場なんですよね。
解説の阿久津八段も「佐藤九段って、こんな棋風でしたっけ? ^^;」と笑っていましたが、内心では「これ疑問手じゃ……」と思っていたのかも。

振り飛車党的には、一目△5四金と指したい気がします。
(悪手だったらスミマセン ^^;)

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遊び駒の活用。以下、▲8五桂なら△8四銀▲7三桂成△同銀引として、次の△6四桂が絶好


▲5三歩成を防ぎつつ、働きの弱かった金を中央方向に持ってくる。
故・大山康晴名人っぽい一手です。
ちなみに、佐藤九段は大山名人の孫弟子ですね。
(佐藤九段の師匠・中田功八段は、大山名人の弟子)

△5四金に対して、

① ▲5二歩(居飛車の5筋の歩を取ってしまったので生じる)は気になりますが、それは△3三角と出てヤブ蛇になりそうな。

② ▲5五銀と打ってくる手は、△5七桂不成が切り返し(↓図)。

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以下、▲5七同金なら△5五金と打ったばかりの銀が取られる


こんな感じでどうかなあと思うのですが、居飛車側にさらなる切り返しがあって、実は振り飛車が全然ダメだったらスミマセン(^^;)

来期もまた佐藤九段の振り飛車を見せてほしい


他にも気になる局面はありましたが、考察はここまでにしましょう。
で、結果ですが、佐藤天彦九段の負けとなりました。
さようなら天さん~!

結果は残念でしたが、今期NHK杯での佐藤九段、振り飛車多用という意外な一面が見れて、非常におもしろかったです。
来期のNHK杯(=佐藤九段はA級棋士なので無条件で出場できる)も、また振ってくれると嬉しいですね。
期待しています。


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