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藤井聡太四冠が、史上初・10代での五冠を達成するか? それとも渡辺明三冠が踏みとどまるか? 2022(令和4)年2月11~12日、王将戦7番勝負第4局が行われました。
2日目の午前中、77手目の選択で、渡辺三冠は1時間を超える長考をしました。私の推測ですが、実戦では出なかった▲2二桂成という手との比較ではないでしょうか。
私としては77手目で▲2二桂成もかなり有力とみて、自分なりにいろいろ検討しました。まあ予想は外れましたが(笑) せっかく考えたので、ブログに晒してみようと思います。
▲2二桂成に△4三金左の変化
77手目に▲2二桂成と指した場合の仮想図が↓こちら。
これに対して後手はどう対応するか? ①△4三金左 ②△2二同金の二択でしょう。まず△4三金左と逃げる手から考えていきます(↓図)。
ここから▲3四歩の突き出しが先手継続の狙いです。3四から桂馬が消えたので、この手が可能ですね(↓図)。
↑図から△4五桂などと逃げると、▲3三歩成とされて後手が困ります(↓図)。
①△同銀は▲4五桂 ②△同金も▲4五桂 ③△3五歩もかまわず▲4五桂~▲4三とで先手よし。角を入手できれば、▲8三角が厳しく残ります。
では77手目▲2二桂成に△4三金左は▲3四歩と突いて先手有利かというと、そうとも言えないのが難しいところ。▲3四歩と突いた瞬間に△3五歩と遮断する手があるからです(↓図)。
↑図から▲2六飛と逃げたとします(↓図)。
ここから考えられる進行例は、△4五桂▲2三飛成△3七桂成▲3二成桂△5一玉▲3三歩成△7七桂(↓図)。
これで先手(渡辺三冠)が勝てるか微妙なところです。この桂馬の打ち込みを▲同銀と取るか玉が逃げるか悩ましい。後手としては、いったん△3三銀▲同成桂△同金▲同龍と清算すればまだすぐには寄らないので、そこで攻撃を続けることができます。先手玉を二段目に引っ張り出せれば、△6六歩・△5六歩といった取り込みが有効になります。
私見ですが、これは後手(藤井四冠)の得意な展開ではないでしょうか。
▲2二桂成に△同金▲同との変化
▲2二桂成と指した最初の図に戻りましょう(↓図)。
▲2二桂成に△同金▲同との変化も考えられます(↓図)。
次に▲3四歩が厳しい攻めですので、それが来る前に後手は反撃に出ます。たとえば、拠点を活かして直接△7七桂のブチ込み(↓図)。
桂馬ではなく、△7七銀と打ち込んでくる手もあるかもしれません(↓図)。
↑図から▲7七同銀△同歩成▲同角と進んだとして、これをどう見るか(↓図)。
どう進んでも難しいところです。ただ、どう攻めてくるかの選択権は後手(藤井四冠)側にあります。先手としては選択権を後手に委ねる以上、どの変化になっても「自分が指せる」という見込みを立ててから踏み込まなければいけません。それは大変なので、77手目▲2二桂成は見送った……というのが私の推測です。
さて、この記事をアップしたのは2月12日15時過ぎです。戦いは続いています。決着を待ちましょう。
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