振り飛車一筋・KYSの将棋ブログ

級位者から有段者までどうぞ! 自戦記や棋書紹介、将棋雑記など、いろいろなネタがあります。

「合い駒の技術」を学べる希少な本『実戦に役立つ詰め手筋』

終盤に関する本は山ほど出版されています。
詰め将棋や必死問題、寄せの手筋といったジャンルが代表的です。
しかし、今回紹介する『実戦に役立つ詰め手筋』は、それらとは少し毛色が違う終盤本です。
 

実戦に役立つ詰め手筋 (マイコミ将棋BOOKS)

実戦に役立つ詰め手筋 (マイコミ将棋BOOKS)

  • 作者:勝又 清和
  • 発売日: 2008/09/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 


タイトルに「詰め手筋」の文言があることからも、詰む・詰まないの場面に関する本です。
しかし、寄せの手筋などの単純な紹介にとどまらず、詰む・詰まないの場面における「考え方」を体系立てて学べる。
それが本書の特徴です。

本書で紹介されている「考え方」を身につければ、不要な読みを削減して、読みの効率をアップさせられること間違いなし!

対象としては、有段者向けだと思います。
級位者では、内容を消化するのは少し難しいかも。
初~二段くらいの人が、終盤技術のレベルアップを目的に読む本、という感じです。

第1~2章「何を持てば詰むか?」の逆算トレーニング


具体的な内容紹介にいきましょう。

第1~2章のテーマは、「何の駒があれば相手玉を詰ませられるか?」。
たとえば、↓の図をご覧ください。
この局面、何の駒を1枚持っていれば相手玉を詰ませられるでしょうか?

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何の駒が1枚あれば詰む?


金・銀・飛車ですね。
このように、持ち駒を「?」にして詰ますのに必要な駒を考える、という逆算方式の問題や解説が第1章です。

「持ち駒?問題」を考えることが、なぜ終盤力強化に必要なのか。
それは、終盤戦においては、持ち駒が激しく入れ替わるからです。
序盤・中盤ならいざ知らず、終盤戦においては、持ち駒がずっと一定のまま変わらない、なんてことは通常ありえません。

つまり、終盤戦は「条件の変化が激しい」のであり、「どういう条件が揃えば勝てるか?」を常に考えながら戦う必要があります。

現有戦力では相手玉を詰ませられないけど、持ち駒にxまたはyがあれば詰む。
そのxまたはyは、どこに落ちているんだ?

このように逆算しながら戦えると、確実に一段階強くなれます。
行き当たりばったりではなく、持ち駒をうまく“揃える”ことを狙えるようになるのですね。
そのためのトレーニングが第1~2章です。

第3~4章「何を合い駒するか?」を体系立てて解説


第3~4章では、受けのテクニックを解説。
具体的には、「王手をされたときに何を合い駒するか?」がテーマです。

個人的には、この第3~4章が超オススメ。
仮に第1~2章がなく、第3~4章だけの内容だったとしても、買う価値ありです。

さて、合い駒の選択は難しいものです。
合い駒を間違えて寄せられた・詰まされたという経験は、みなさんもあるはず。
勝敗に直結する重要なテーマにも関わらず、合い駒という技術を丁寧に解説してくれる本は、なかなかありませんでした。

本書は、そんな需要に応えてくれる良書。
合い駒を選択する際のポイント・考え方を実に明快にまとめています。
これをちゃんと身につければ、合い駒の正解・不正解の見分けがスピードアップすること間違いなしです。

たとえば↓の図をご覧ください。
いま、龍で王手を掛けられたところです。

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どの駒を合い駒するか?


玉が逃げるのは詰みなので、合い駒をするしかないのですが、何を合い駒すれば詰みを免れるか?
飛車から歩まで駒が一式揃っていますが、正解は一つだけです。

こういう場面で「合い駒の考え方」を知らないと、飛車から歩まで全パターン(=7種類)の合い駒を読むという、非効率的な事態に陥ります。
特にアマチュアの将棋は持ち時間が短いため、詰む・詰まないの場面では、30秒将棋などになっていることがほとんど。
そんな時間切迫の状況で、全パターン読むという力技ではなかなか勝てません。

本書を読めば、↑図のような問題は、(勘ではなく)理論立てて素早く正解を導き出せるようになります。
ちなみに正解は▲3八金。
これ以外の合い駒はすべて詰まされます。

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詰みを逃れる唯一の合い駒


たとえば▲3八銀(角・桂・香・歩も同じ)などと誤った合い駒をすると、△3九銀▲同玉△4八金……という手順で詰み。
▲3八飛の合い駒も、△3九銀▲同玉△4九金▲2八玉△3八龍▲同玉△4八飛で詰まされます。

著者は勝又七段 アマにプロの将棋を伝える技術が抜群


著者は勝又清和七段。
大変失礼ながら、目立った戦績を残している棋士ではないため、将棋界に詳しくない人は「誰それ?」と思うかもしれません。

しかし勝又七段、私が尊敬するプロ棋士の一人です。
何がすごいかというと、プロの将棋の魅力や技術、はたまた歴史の変遷などを、アマチュアにも理解できるよう噛み砕いて伝えるのが抜群に上手いのです。

今回紹介した『実戦に役立つ詰め手筋』以外にも、『最新戦法の話』『消えた戦法の謎』といった本は良書です。
また、将棋世界2020年8月号から、勝又七段の連載講座が始まっており、私はこれ目当てで将棋世界を買っているくらいです。
「勝又七段の本にハズレなし」は覚えておくといいでしょう。