今回の記事は、2025(令和7)年に開催された市民将棋大会の参加レポ後編です。前編は↓こちら。
【準決勝】石田流で進めてみたけれど
ここからは負けたら終わりのトーナメント戦。準決勝は、反対ブロックから1位で上がってきた人との闘いです。相振りの出だしかと思われましたが、相手が早々に「居飛車にしますわ」と表明。こちらは三間に振ったので、その流れで石田流にしたのですが……
俺、こういう将棋はダメなんだぁーーー!
「歩の上で飛車を捌く技術」ってものを持ち合わせていない(^^;) どういう構想で進めていけばいいのか、皆目わからんのです。
強引に捌いてみたのですが、やっぱり無理だったようで、駒損が酷い状況になり、かなり劣勢……というか敗勢に陥ってしまいました。↓図は、相手が△5五角と来たところ。次に△3六桂を狙っています。
これはかなり受けが難しいです。しかも受けに手駒を投入してしまうと、戦力不足になってジリ貧確定。尋常な手段では勝ち目がないと感じた私は、勝負に出ました。図から▲4六歩△同角▲4七銀!
これで角に当てつつ、△3六桂を防ぎます。自ら美濃囲いを崩すので非常に怖いですが、これくらいのリスクを負わないと、ここから逆転はありません。
美濃囲いの脇が開いたので、相手は△7八龍と「王手馬取り」をかけてきました。目を瞑って▲3八金。
ここから△5七角成と入ってきました。角を逃げつつ、△3九銀からの詰みを狙った当然の手に見えますが……ここで私の目がキラーンと光りました(笑) ノータイムで盤に叩きつけるように▲5八歩。
△4七馬と切ってくれれば、▲同馬で私の馬が手順に逃げられます。かといって△7四龍▲5七歩と馬を取り合うのでは、龍が攻めから遠ざかってしまい、しかも次に▲3一角があるので一回受けなくてはいけない。これは変調でしょう。
相手は△2四馬と逃げましたが、こちらも▲6四馬と逃げます。次に▲3一馬を喰らっては事件なので、相手は△5一金と受けてきました。
検証していませんが、たぶん「将棋としての最善」は▲9一飛成だと思います。次に▲2六香や▲3六桂があるので、また相手は△7一歩などと受け、そこで私の攻めの手番が続くからです。
しかしこの局面、もう私の持ち時間が少ない。ここで飛車を逃げて新規巻き直しになると、時間切れに陥る可能性が高い(※この大会は30分切れ負けルール)。
よって、無理気味でも飛車を切って攻めを続けるのが「この状況での最善」だと思い、▲5一同飛成と踏み込みました。飛車を切った直後にノータイムで▲4四歩。
先ほど受けの際に4筋の歩を切った効果がここで出ました。私の守備陣が▲5八歩の効果で安全になったので、しばらくは攻撃に専念できます。4筋に歩が立つので、私の攻めを振りほどくのは相当困難ではないでしょうか。7八龍が、攻めにも守りにも全然効いていない駒と化したのが大きい。
──などと書くと、まるで逆転したかのような雰囲気ですが、実際はまだこちらが悪い。駒損が大きいので、手が止まったら終わりです。ひたすら喰い付きます。とにかく嫌味な状態を作り、相手を楽にしないのが逆転を狙うポイント。
↑図は、次に▲3三金から▲4三歩成を狙っています。相手は△4四金と、根元の歩を外してきましたが、これはどうだったか。
ここで私の目がまたキラーンと光りました。千載一遇のチャンス。ブランクがあっても、これは秒で見えます。▲3一角!△同金▲同馬!△同玉▲4二金打。
相手から「あっ……」と声が上がりました。角2枚を犠牲にする手順だけに、見落としていたようです。以下、△2二玉▲3二金寄△1三玉に▲4四金。
動揺したのか、△1三玉と上がってしまったのも悪手。↑図が、▲2二銀からの詰めろになってしまったからです。ここは△1二玉と寄っておけば、どこかで△3一銀と捨てて手を稼ぐような手段も残されており、勝負はわかりませんでした。
ここまで進めば、ハッキリ逆転。抵抗の余地がありません。あとは順当に押し切りました。
命拾い。その一言に尽きます。これで決勝進出です。
それにしてもシンドイ。最後はギリギリの攻防で、緊張感やスリルが満点。いやね、若い頃は「これが将棋の醍醐味」と楽しめましたが、この歳になると疲れるだけなのよ(笑)
【決勝】予選で負けたリベンジなるか
決勝は、予選で負けてしまった相手との再戦です。予選で指したときに強敵だと思いましたが、やはり順当に決勝まで上がってきました。
戦型は、再び私の中飛車に、相手の居飛車穴熊。予選のときは美濃囲いに組みましたが、同じではつまらないので、こちらが振り飛車穴熊にしました。
どのような構想にするかですが、▲7五歩と突いて▲5六飛~▲7六飛と浮き飛車にする形を選択。これなら「歩の上で飛車を捌く将棋」にならないから、さっきみたいな憂き目は見ないでしょ(笑)
その後、▲7六飛~▲6六角~▲7七桂の理想形に組み上げ、上手く開戦することに成功。まだ形勢の針は振れていませんが、主導権は握った感じです。相手も角道を通して動いてきます。
次に△5五角がありますが、すでに小競り合いに突入しているこの局面なら、5五歩は取られて構いません。5筋の歩が切れれば、将来逆に▲5二歩の垂らしや▲5九歩の底歩が発生するからです。といっても、ダイレクトに取られるのでは芸がないと思い、いったん▲5六飛△4四金の交換を入れてから▲8六飛と回りました。
さてしばらく進んで、私は8筋から、相手は4~6筋から攻めているのが↓図。
私としては8筋突破の実現を期待しているのではなく、それを見せて相手に動かせることが狙いです。しばらくは丁寧に受けに回る必要がありますが、どちらかと言えば受けの棋風の私、こういう展開は嫌いではありません。
実際、居飛車穴熊もそれほど堅くないので、相手も強引な攻めをすると反動がキツいはず。さて、私は▲5五歩と飛車角の焦点に打ちました。
逃げる手はありませんが、△同角もないでしょう。居飛車の攻めが遅くなるので▲8二歩、あるいは▲7四歩という手もあります。▲7四歩は、次に▲5五飛~▲4四角の王手飛車狙い。居飛車穴熊のハッチが閉まっていない罪です。というわけで、相手は△5五同飛と取ってきましたが、▲6六歩と打ちます(↓図)。
これで角が死んでいます。△4八歩成▲同金寄△同角成▲同角と進めてきましたが、
やはり次に▲4四角の王手飛車があります。一回△3三銀と受けてきましたが、ここで後手を引くのは痛い。さすがに優勢になったと思います。△3三銀以下、▲6六角△4五飛と進んで↓図。
次に△3七金の突進が気になりますね。よって▲4八歩と受けましたが、これはイマイチだった(^^;) 正解は飛車取りに打つ▲6三角だったと思います。
これで△3七金なら、▲4五角成と根元の飛車を抜く手があります。▲6三角に△4二飛と逃げれば、▲4三歩~▲4四歩と飛車先を連打し、角2枚で飛車をシャットアウトできます。相手の飛車さえ封じれば、振り飛車陣には怖いところがありません。こうなれば明快に決まっていました。
しかし、実戦では▲4八歩と打ったために△4七歩と喰い付かれました。最善手の▲6三角を逃したのはともかくとして、▲4八歩ではなく、せめて次善手の▲3九金と寄る手くらいは指したかった。
このあとは時間切迫もあって焦り、悪手が連続で出てしまいました。こんな大事なところでフラフラしているようじゃ、そりゃ勝てるものも勝てないわ。↓図はクライマックスの局面。
もう私は受けなし。▲3九玉は△4九金以下詰み。対して、居飛穴に喰い込んでいるのは3三桂の一枚だけ。あー居飛穴は全然詰まないわー。これは振り飛車負けたわー。
──って思うじゃないですか?
ではここから居飛穴の死に様をご覧に入れましょう
ホーッホッホッホッホッ(フリーザ風)
▲2一桂成△同玉▲3三桂!
△3三同金▲2二金!△同玉▲1一角△3二玉▲3三角成△同玉▲3一龍。捨て駒の連続で迫り、安全に見えた居飛穴玉に対し、▲3一龍と一間龍の形に持ち込むことができます。
おおっ!? これは居飛車トン死じゃね?
──って一瞬思うじゃないですか?
実際は全然詰まないけどね
上部の押さえがないので
あと上部に歩の一枚でもあれば……という局面ですが、残念ながら相手玉は不詰め。こちらの玉は受けなしで、負けです。私が投了した瞬間、周りを囲んでいたギャラリーがホウッと息を吐き、張り詰めた空気が解けました。
戦いを終えて……
というわけで、優勢な将棋を落としてしまい、残念ながら準優勝でした。同じ相手に二度負けたってのが、ちょっとなぁ……。
有段者クラス・級位者クラスともに入賞者を集め、記念撮影をしました。ちなみに有段者クラス3位は、小学生と思しき子どもでした。小学生は、伸びる子は半年くらいで本当に見違えるくらい強くなることがあるので、来年あたり、どうなっているでしょうか。級位者クラスにも小学生が何人も参加しており、町の未来は明るそうです。そのときに老害振り飛車党として立ちはだかるのが私の役割ですな。