今回の記事は、2022(令和4)年に開催された市民将棋大会の参加レポ・中編です。前編は↓こちら。
【2回戦】相振り飛車
序盤 相手が変則的な出だし
大会というものは、どうしても初戦が一番固くなりがちです。しかし逆に言うと、それ以降は緊張が解けて楽な気分で臨め、実力を発揮しやすいもの。トーナメント2回戦。私が後手番で、戦型は相振り飛車の雰囲気です(↓図・便宜上先後逆で表示)。
ここから相手が変則的な指し方をしてきました。角銀を上げてから△2二飛の向かい飛車や、△4三銀~△3二飛の三間飛車が普通のところ、△3三桂と跳ねてきました(↓図)。
なんだこりゃ? 序盤ですが、思わず考え込みました。糸谷流右玉でも狙っているのだろうか? でも、こっちの飛車がすでに7筋にいるんだから、そりゃ無理だろうよ。
あー、そういうことね。ここから△2二飛と振って高田流みたいな感じで指そうと。そうとわかれば話は早い。こちらの方針は「速攻」に決めました。
高田流は私も一時期使っていましたが、あれは駒組みが完成すれば優秀です。が、速攻されて駒組みの途中で戦いになると、一方的に攻め倒されることがままあります。使い手に相当な腕力がないと、まとめきれません。
速攻ということで、▲6六銀と出ます(↑図)。次に▲5五歩から開戦する腹積もり。形勢はともかく、相手にとっては嫌な順のはず。
▲5五歩と突っ掛け、さらに▲4八金寄で▲5八飛の余地を作ります(↑図)。相手は飛車先の歩も伸びておらず、このまま本格的な戦いに突入すれば、こちらだけ一方的に攻める展開が見込めます。
相手に悪手が あっという間に必勝形に
以下、数手進んだのが↓図。
!!!???
(;゚Д゚)
いやいやいや、いくら飛車の活用を急ぎたいからって、▲5四歩を取り込ませちゃダメっす。↑図から▲5四歩が実現して早くも大優勢に。さらに相手の疑問手が続きます。
△4五桂跳ね。次に△5七歩と打って飛車を遮断する狙いですが、これは無理筋。
フワッと▲5六飛。これで△5七歩の狙いは頓挫しています。次に▲4六歩で桂馬を殺す手が受かりません。
実際その通りに進んで必勝形なのが↑図。どれくらい有利かというと、ここから相手が藤井聡太四冠に変わっても絶対負けないくらいです。↑図から力強く▲2六金と出て相手の飛車を圧迫、僻地に追いやりました(↓図)。
↑図から△3一角▲2三金△1四飛と逃げたので、▲2六桂と打って飛車を捕獲。この▲2六桂まで見据えたうえで先ほど▲2六金と指しました。桂得が飛車得に拡大し、わらしべ長者モードに。
キレイな決め手でフィニッシュ
飛車を召し取った直後の↓図。ここでどう指すか? △6二玉と逃げられる前に決めたい。
▲4四銀と出るのが自然な攻めですが、その瞬間△5五歩と「焦点の歩」を打たれると多少長引きます。①▲同飛なら△4四銀 ②▲同角なら△5四銀。
実戦では、↑図から▲4四銀ではなく他の手を指しました。それが決め手で、ここから5手で相手が投了。その手とは?
▲5三歩成△同金▲4四銀(↑図)。▲5三歩成の成り捨てを入れてから▲4四銀と出て、相手は参っています。△5五歩には構わず▲5三銀成です。
結局、↑図から△4四同銀▲同角と進み、処置なしと見た相手が投了しました。駒がぶつかってからの相手の指し方が、さすがにまずかったですね。これでベスト4(準決勝)進出です。
【準決勝】相手のアヒルに居飛車で対抗
飛車が振りにくい展開 仕方なく居飛車に
準決勝ですが、序盤早々事件です。
飛車が振れなくなった
正確には▲5八飛とすれば中飛車にできますが、なんかムカつきます。早くも一本取られました、妥協しましたみたいな感じで。それは癪なので、「別に私困ってませんけど^^ 居飛車も全然やれますんで^^」と虚勢を張って▲4八銀としました。はい、振り飛車党の私は美濃囲いの“安心感”に身体が慣れているので、居飛車は背筋がヒンヤリします。
相手の出方がわかりませんでしたが、しばらく進んだ↓図。
こ、これはまさかアレか? アヒル戦法なのかっ?
まさかアヒルの使い手と、こんなところで遭遇するとは……。私も将棋歴は長いですが、アヒルと対戦するのは初めてです。どんな感じで指し進めれば、と思っていると、相手から動いてくれました。
んん? これは変では……。一歩交換の狙いはわかりますが、自分の桂馬の頭から動くのはリスクが高すぎる気がします。▲3五同歩と取ってもよかったですが、▲3八飛と回って対応。↓図のように進みました。
こういう展開になると、相手としては、「歩を手持ちにした得」よりも「桂頭にキズを抱えた損」の方が大きいと思います。公平に見て、私の方がじゅうぶんだと思います。
中盤 超簡単な決め手を見逃す
さらに駒組みが進んで、相手にウッカリがあったと思われるのが↓図。
1五歩がタダなんだけど……。何か罠があるとも思えないので、▲1五角と歩を頂戴します。以下、相手は△2二角と引きましたが、▲2四角で飛車を取って優勢。相手の飛車がいなくなったので、▲3四歩の桂取りが厳しいです。言わんこっちゃない。
↑図から△3七歩▲同桂△2九角~△7四角成で馬を作られましたが、角を手放してもらえたので、逆にわかりやすく楽な展開になりました。その後、6四馬の位置から△8六歩▲同歩△同馬と進んだ↓図。
次の一手問題だと思えば簡単でしょう。正解は▲8二歩ですね。△同金なら▲8四飛の馬金両取りで終了です。
ところが
▲3四歩の桂頭攻めしか考えていなかった私、左辺は安全に収めることしか頭になく、ノータイムで▲8七歩と打つ。
着手した瞬間に「あっ」と気付きました。もうね……(笑)
終盤 必殺の桂捨てでトドメを刺す
といっても劣勢になったわけではなく、優勢を維持したまま終盤戦に突入。
ここから相手の守備陣をどう崩すか? 一見スキがなさそうですが、振り飛車党のくせに私は冴えていた(笑) ▲7二歩△同金▲3三歩成△同金▲2一飛(↓図)。
▲7二歩のタタキと▲3三歩成の成り捨て。いくら振り飛車党でも、有段者なら一目の筋ですね。あっという間に「相手玉が見える形」になりました。
そこから進んで↓図。局面は必勝ですが、残り時間が約3分と切迫。間違えずに寄せ切れるかっ?
パッと見は▲4一角と打ちたい。対して、
- △6一玉と逃げれば、▲6三角成で頭上を抑えて寄り筋
- しかし、△6二玉とされると継続手がない。仮に6三の地点にスペースがあれば、以下▲6三金△7一玉▲5二角成で決まるのだが
再掲↑図、6三の地点にスペースさえあれば……。そう思っていたら閃きました。時間もないので、簡単な確認だけして踏み込みます。
必っ殺ぁぁぁーつ!
▲6四桂の捨て駒。これが強烈な一手。△同歩と取るしかありませんが、そこで▲4一角△6二玉▲6三金△7一玉▲5二角成(↓図)。
思い描いたとおりの図が実現しましたが、ここまでしか読んでいません。もしここで相手にうまい受けがあれば大失敗ですが、はたしてどうか? 必死に読みます。
次に▲5一龍~▲7二銀の詰めろですが、
- △3一桂と受けても▲4二馬がまた詰めろ
- よって△8一玉の早逃げだが、▲4二馬~▲5一龍と銀二枚を取れば勝ち。相手の反撃は△6六桂くらいしかないが、▲同銀△同馬と対応すれば自玉はまったくの安泰
見切りで踏み込んだのですが、受けはないようですね。実際、▲5二角成の場面で相手が投了しました。
序盤で不本意な展開になり、慣れない居飛車での戦いでしたが、相手の疑問手をうまくとがめることができました。中盤で▲8二歩を見逃したのは酷いですが(笑) 最後の▲6四桂捨てが決まったのでチャラにしてください……。
次はいよいよ決勝です。