私がまだ初級者だった頃、先生に口酸っぱく言われたことがあります。
天守閣美濃(左美濃)に組むときは、必ず端歩を突いてからにしなさい。
天守閣美濃を組むときは▲9六歩→▲8六歩の手順を守ろう
天守閣美濃に組むときは端歩を突いてから。
どういうことか?
↓の局面をご覧ください。
居飛車 vs 四間飛車の戦いですね。ここから天守閣美濃に組むのであれば、まず▲9六歩と端歩を突きなさい、ということ。
端歩を突いてから▲8六歩~▲8七玉と天守閣美濃に組んでいく。もう優に20年以上前になると思うのですが、「これが正しい手順だよ」と教わったことを、今でもよく覚えています。
戻って、▲9六歩と端歩を突く前に、▲8六歩~▲8七玉と天守閣美濃に組みに行くのはNG。たとえば、端歩を突かない天守閣美濃を見てください。
いかにも危ない格好です。
具体的には、△9五桂で簡単に王手がかかる形です。これでは、中~終盤戦を爆弾を抱えたまま戦うことになり、指し手の選択肢が著しく制限(=安易に桂馬を渡せない)されます。
今回の例は天守閣美濃でしたが、ようするに先生の教えは、「自玉を容易に王手がかかる形に囲ってはいけない」ということです。
私の実戦から 端歩を突かない天守閣美濃の脆さ
私の実戦から一つ紹介します。手前の振り飛車側が私。対戦相手が基本を守らずに、端歩不突きの天守閣美濃に組んできました。
こういう場合、振り飛車側から▲1六歩と突いてはいけません。それは△1四歩と突き返されて、天守閣美濃が安全になってしまい、振り飛車が損をします。
なんとか、この状態のまま戦いを起こせないか? 私はそのように考えて指していました。進んで↓図。
いま、△5六角で龍金両取りをかけられたところ。しかし、私はこの両取りを承知のうえで踏み込んでいます。▲8一龍△7八角成に、▲1五桂の王手が痛打も痛打。
△1四玉と逃げるのは、▲4一龍△同銀▲2三銀で簡単に寄り。というわけで△2二玉と逃げましたが、▲2三銀△同銀▲4一龍と追撃して↓図。
ここから先は本題から外れますが、せっかくですので、参考までに寄せの手順をご覧ください。居飛車は△3二銀打と抵抗してきますが、▲2三桂成△同玉▲3一飛(↓図)。
次に▲3二飛成と▲2一飛成の両狙いがあるので、△4一銀と龍を取ります。以下、▲2一飛成と王手をかけ、△2二角の移動合い(3三に退路を作った)に、▲4四歩(↓図)がこれぞ筋という一手。
この歩を△4四同金と取ると、玉の逃走路がふさがってしまいます。よって△4二金と引きましたが、▲1五桂△3三玉▲4三金と俗手で迫り、投了となりました。
抵抗の余地がまったくないまま、天守閣は崩れ落ちました(笑) 本能寺での信長くらい、あっけないですね。端歩を突かずに天守閣美濃に組むのがいかに危険か、こうした実戦例からも理解していただけると思います。
関連記事
『藤井システム』 四間飛車党必読! 左美濃(天守閣美濃)への対策書