冒頭からケンカを売るようなことを書いてアレですが……。
四間飛車党だったころ、私は右四間飛車に負けた記憶がほとんど……というか、まったくと言っていいほどありません。いや、自分より格上の人間が右四間を指してきた、というシチュエーション自体がないだけでしょうけど……。
それはともかくとして、右四間撃破の原動力になってくれた棋書が、今回紹介する『杉本流四間飛車の定跡』です。
だいぶ昔の本(紙版は2003年出版)ですが、2020年現在でもじゅうぶん通用する内容です。対右四間の指し方をかなり深く、かつ丁寧に解説しているので、「右四間うぜー」と思っている四間飛車党は必読。本書の内容を押さえておけば、最近流行り(?)の「エルモ囲い+右四間」という組み合わせにも対応できるはず。
級位者から有段者まで幅広くイケる!
読者の対象は、級位者から有段者まで幅広くいけます。
ただし、ある程度四間飛車を指した経験があり、「四間飛車とは何ぞや」がそれなりにわかっている人向け。つまり、四間飛車の基本を身に付けた人が、芸を広げるための“プラスアルファ”として読む本。四間飛車の入門書ではないので、そこはご注意を。
第1章 対右四間を急戦から持久戦まで一通り網羅
さて、本書の内容を少し詳しく説明。
対右四間というと、↓図のように5六銀型に構える人が多いのではないでしょうか?
本書でも、まず▲5六銀型を「基本」として取り上げ、対右四間の攻防を解説しています。四間飛車側の裏ワザ、9八香+6九金待機型も紹介されています。
ただし、▲5六銀と上がる形は「振り飛車大変かも」と解説を〆ています。そこで登場するのが6七銀型。
この形で右四間を迎え撃つのが本書のオススメ。ここからの攻防は、本でご覧ください。私もこちらの指し方が好みです。
また、右四間に天守閣左美濃 or 米長玉銀冠 or 居飛車穴熊を組み合わせてくる形もキチンと解説。急戦から持久戦まで、対右四間の指し方を一通り網羅。本書を読んでおけば、「右四間の破壊力になすすべなく一方的に敗れた」ということはなくなるでしょう。
ただし、繰り返しますが、それなりの四間飛車経験者が読む本。四間飛車の初心者には、まったくオススメできないので注意。
第2章 △6五歩早仕掛けに玉頭銀で対抗
本書は対右四間だけでなく、対△6五歩早仕掛けも紹介されています。それが第2章。
まず、ベーシックな↓の形を解説。
しかし、これは四間飛車側がおもしろくないと結論。そこで、対抗手段として玉頭銀を取り上げたのが本書です。
結論としては、居飛車に最善を尽くされると、互角程度にしかなりません。ただ、局面ごとの考え方、手の作り方、急所の筋などが随所で解説されており、実戦への応用度は高いです。ここで学んだことは他の戦型でも活かせるはずで、いってみれば「四間飛車のコツ」が学べる内容です。
この第2章も、玉頭銀戦法の入門として、級位者から有段者まで幅広く使えます。
著者の杉本昌隆八段は振り飛車の第一人者
本書の著者は杉本昌隆八段。
杉本八段というと、藤井聡太二冠の師匠というのが真っ先に思い浮かぶでしょう。いや、逆に言うと、それ以外のことは知らない人も多いのでは……。
しかし杉本八段、若手時代(1990年代)から振り飛車の定跡整備に多大な貢献をしてきた棋士。間違いなく振り飛車発展の歴史を担ってきた一人であり、振り飛車党の私にとっては尊敬するプロ棋士です。
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