振り飛車一筋・KYSの将棋ブログ

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千日手のメリットや活用法について考える

2022(令和4)年6月3日。藤井聡太五冠 vs 永瀬拓矢王座の棋聖戦5番勝負は、初っ端からスゴい展開に。ご存じの方も多いでしょうが、一度の対局で千日手が2回。3局目に永瀬王座が激闘を制しました。

今回の記事では、いま話題(?)の千日手について語ってみます。

かつて永瀬王座の代名詞は「千日手」だった!?

将棋歴が浅い人はご存じないかもしれませんが、「千日手」という単語が、永瀬王座の代名詞だった時代があります。

かつて振り飛車党だった頃の永瀬王座は、「先手番でも千日手を辞さない棋士」などと言われていました。2011(平成23)年のNHK杯では、佐藤康光九段を相手に、やはり一対局で2回の千日手を実現(?)させています。

何かで読んだ記憶がありまして、「先手番でも後手番でも、あまり関係ない」と思っていたようです。つまり、先手番で千日手になって後手番で指すことになっても別にいいや、というわけ。

もっとも、居飛車党に転向し、タイトル戦などを経験してからは、そういうことはなくなったようです。先後の差についての認識を改めたのだとか。

無理に打開して形勢を損ねるよりは千日手を

若手時代の永瀬王座は、千日手について聞かれたとき、確か以下のように話していたと思います。

「千日手にするのは、形勢が五分ないとき」
「形勢が五分ないのに、無理に打開すると形勢を損ねる。そうなるくらいなら、もう一局指した方が勉強になる」

「先手番なのに千日手にするのは、作戦失敗を認めるみたいでカッコ悪いなぁ~」と無理に打開して形勢を損ねるケースは、プロアマ問わず、案外多いのではないでしょうか。それで負けたら元も子もないですから、永瀬王座の考え方は極めて合理的だと思います。

このあたりの考え方は私も見習っていて、「先手番でも千日手上等」スタイルの男になっています(笑)

千日手の活用法① 相手の手の内を知ってリスタート

それでも「先手番千日手」をためらう人向けに、我々アマチュアの視点から、千日手のメリット・活用法について少し考えてみましょう。

アマ大会での悩みが、「対局するまで相手の手の内がわからない」です。

今から対戦する人は居飛車党なのか、振り飛車党なのか。どんな戦法を使ってくるのか。実際に指してみるまで不明というのは、けっこう怖いものです。

その点、実際に一度指して千日手になった場合、指し直し局では相手の手の内を知ることができているので、より合理的な戦法選択が可能になります。たとえば、相手が「いきなり角交換からの筋違い角党」と判明した場合、指し直し局では角道を開けずに戦う、という具合です。

もちろん、こちらも相手に情報を渡しているので、お互い様ではありますが。

千日手の活用法② 時間差をつけてリスタート

また、持ち時間に大きく差がついている局面で千日手になりそうなら、先手番でも積極的に千日手にしてよいでしょう。指し直し局では、こちらだけ持ち時間が多い状態から始まります。

アマチュアレベルだと、先後の差よりも、持ち時間の差の方が形勢に与える影響は大きいはずです。切れ負けの将棋なんかだと、なおさら。

もっとも、あまり出現しないケースだとは思います。形勢の苦しい方が時間を多く消費するので、持ち時間に大きな差があるということは、形勢にも差がついている(=こちらが優勢な)可能性が高いです。そこで千日手にしてしまうと、相手が助かってしまうので。

千日手の活用法③ 強豪相手に5割の確率で勝てる!?

最後に、かなり例外的な活用法をひとつ。

アマ大会は運営の都合上、一局の将棋がやたら長引くと困ります。したがって、藤井 vs 永瀬戦のように2回千日手が成立した場合、そこで対局を打ち切り、くじ引きやコイントスで勝敗を決めてしまうことがあります。

まともに激突したら勝ち目の薄い強豪と当たった場合、なんとか2回千日手に持ち込んでしまえば、5割の確率で勝つことができます。

(事前に大会運営ルールの確認は必須ですね)

狙って実行するのは相当難しいですが、千日手に持ち込みやすい形というのは存在するので、研究してストックしておくと役に立つかもしれません。たとえば↓図のようなケースです。

▲3八飛△4四角▲2八飛△3三角……を繰り返して千日手

▲8八飛△8二飛▲6八飛△6二飛……を繰り返して千日手。飛車の往復運動

▲3八金寄~▲4八金寄の反復運動を繰り返して相手の動きを待つ

相手が千日手2回を嫌い、形勢を損ねるのを覚悟で打開してきたら、こちらに利のある戦いになります。つまり、千日手2回をチラつかせることで、相手の無理な動きを誘うわけです。現実的には、こちらの活用法が本命になるでしょう。

「自分の方が格下」だからこそできる手法です。セコいですけどね(笑)

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