2022(令和4)年5月8日放映のNHK将棋トーナメントは、千田翔太七段 vs 杉本和陽五段の戦いでした。どうも千田七段が有利だったようですが、粘りが実ったか杉本五段が逆転勝ち。
振り飛車の使い手・杉本五段が勝ち残ったのは嬉しいですね。次の相手は広瀬章人八段なので、また対抗形が見られそう。
実戦は金銀ベタベタ打ちの力ずくで詰み
この将棋のクライマックスが↓図。後手の手番です。
結論を言えば、↑図で先手玉(千田七段)は詰んでいます。どう詰ますかというのが本記事のテーマです。
実戦では、杉本五段は△8四香から詰ましに行きました。以下は、▲同金△同歩▲7五玉△8五金▲6五玉△5五金▲6四玉△5三銀打……までの詰みです。最後は金→金→銀と贅沢に使ってフィニッシュ。遠くにいた4四銀まで詰みに働いています。
ただ、この詰まし方は4四銀がいないと成立しません。また、持ち駒が豊富なので、金銀をベタベタ打って力ずくでも詰みますが、もうちょっと少ない手駒で詰みに持っていく手順はないものか? と考えちゃいますよね。
実は銀と桂馬だけで詰む 邪魔駒消去のテクニック
実はこの局面、持ち駒は「銀と桂馬」だけで詰みます(↓図)。
ちょっと珍しい筋ですが、王手の選択肢は限られているので、そこまで難しくないと思います。↓クリックするとヒントが開きます。
今のところ、8五玉は上下左右に一歩も動けない「がんじがらめ」になっていますが、7五金がいなくなると、途端に右への逃走ルートが開けて面倒になります。7五金に触らないように。
実は盤上に「邪魔駒」があります。それは9四歩です。もし9四歩がいなければ、△9四銀と打って一手詰みですよね。9四歩をうまく消去できれば……。
さて、いかがでしょうか?
結論が出た方は、↓クリックして答えをご確認ください。
正解は△9三桂打です(↓図)。
これに対しては、▲9四玉と逃げるしかありません(↓図)。
↑図での次の一手がおわかりでしょうか? 正解は、打ったばかりの桂馬を捨てる△8五桂です(↓図)。
9一の香車による空き王手です。合い駒は無効なので、▲8五玉と元の場所に戻るしかありませんが……(↓図)。
あら不思議。↑図は、初形から9四歩が消えた形になりました。あとは歩が消えたスペースに△9四銀と打って詰みです。桂馬と銀の持ち駒だけで詰ます手順でした。
解答は以上ですが、重要な補足をひとつ。
△9三桂「打」ではなく、△9三桂「跳ね」だと詰みません(↓図)。
先ほどと同様、△9三桂に▲9四玉△8五桂と進み、同じ詰み筋に入ったように見えます(↓図)。
実際、▲8五玉と戻ってくれれば△9四銀で詰むのですが……。
はい、▲9一龍と根元の香車を抜きながらの逆王手がありました。これで先手玉は詰みません。というか、逆に後手玉が詰まされます。「空き王手のときは、根元の駒を抜かれないように注意」ですね。
この場合は、9一香(王手をする駒)と9四玉(王手をされる駒)の関係しか目に入らず、6一龍の存在を完全に忘れていました。根元の駒を抜かれる筋、けっこう犯しやすいミスなので注意しましょう。