粉砕! 玉砕! 大喝采!
フハハハハハハハハハハ!
全世界の振り飛車党歓喜。振り飛車の使い手として、これ以上の喜びがあるだろうか。いや、ない。
【話題1】菅井八段の中飛車が藤井五冠を粉砕!
2022(令和4)年8月10日、私的には今年度でもっとも注目の一局でした。A級順位戦にて菅井竜也八段が、棋界最高峰の藤井聡太五冠を撃破。
いやぁ~、さすが菅井八段としか言いようがない。
初タイトルの王位を失った後、その次がない……。最近は朝日杯や銀河戦で優勝するなど、復調の兆しが見えましたが、これらは持ち時間の短い棋戦。菅井八段は一発屋で終わってしまうのか……。
しかし今回、持ち時間の長い順位戦で、しかも藤井五冠相手に勝ったのが嬉しい。「振り飛車党旗頭・菅井健在!」を強烈に印象づける一局でした。本人も自信になったのではないでしょうか。これをきっかけに、再びタイトル戦に絡むような活躍を期待したいですね。
将棋の内容にサラッと触れておくと、中飛車に振った菅井八段は、穴熊ではなく美濃囲い~木村美濃。で、玉側の端歩を突き越される。
美濃囲いで居飛車に端歩を突き越される。私のようなアマチュアにとっては、気持ち悪くてしょうがない形なのですが(笑) どうかなぁと思って観ていましたが、この端の位がまったく活きない展開になり、菅井八段が見事に押し切りました。
個人的にもっとも印象深かったのは、▲9六歩と突いて▲9七角と出る順を作った手ですね。指されてみれば当然の手ですが、中央で戦いが始まっているだけに見えなかった(^^;) これで自陣に残って負担になりそうだった菅井八段の角が、藤井五冠の飛車と交換になり、大きく得をしました。
【話題2】7~8月のNHK杯は振り飛車が頻繁に登場
振り飛車といえば……最近、NHK杯で振り飛車が普通に勝ったのを見た記憶がない。
そんな不満をようやく払拭してくれたのは久保利明九段。中村太地七段との一戦で三間飛車を採用。途中、形勢はいい勝負でしたが、実戦的に居飛車の中村七段がまとめにくい形になり、久保九段の振り飛車経験値が活きる形になったと思います。
有利になってからも慌てず、どっしり腰を落ち着けてリードを広げていく。土俵際まで確実に押し込み、最後はしっかり寄り切り。
他のカードでは、今泉健司五段 vs 里見香奈女流四冠(対局時)という、近年のNHK杯では極めて珍しい、振り飛車党同士の対決も実現。昔のNHK杯は、決勝で相振り飛車が見れたりしましたが、もうそんな時代は来ないのかなぁ……(←遠い目)
やはり振り飛車党の杉本和陽五段は、広瀬章人八段と対決。力の差があったか、最後はキッチリ逃げ切られました。まあ、杉本五段の本格的な振り飛車が見られたので、個人的には満足です。
【話題3】里見女流五冠のプロ編入試験
振り飛車うんぬんに関係なく、いま将棋界でもっとも注目を集めているのが、里見香奈女流五冠のプロ編入試験です。5戦中3勝すれば、史上初の女性のプロ棋士の誕生。
編入試験の権利を取得してから、実際に「挑戦」の意思表示をするまでに時間がかかったので、「里見は挑戦しないのか?」と予想する向きもありました。が、権利を行使しなかったら、後で「やっぱり挑戦しとけばよかった!」となるでしょうから、挑戦するだろうとは思っていました。
冷静に考えれば、挑戦を見送ってもメリットはなく、また、失敗してもデメリットはほとんどありませんしね。
ただ、里見女流五冠も30歳。年齢的に、ここからはさほど棋力の上昇が見込めないので、仮にプロになったとしても、どこまで戦っていけるかは正直疑問ではあります。また、中飛車に偏った戦法選択が、プロでは相当に狙い撃ちされるのではないかと。
里見女流といえば……もう十何年前になりますが、私が中国地方の大会に参加したとき、里見女流がゲストとして来場されていました。当時の里見女流は中学生で、まだ挨拶などにあどけなさが残っていましたが、すでにタイトル挑戦を決めている新鋭の若手女流棋士でした。
その里見女流も今では追われる立場になり、中堅~ベテランの域に入ってきています。私も歳をとったなぁ……(←遠い目)
さて、第1戦の相手は徳田拳士四段。現在ノリノリの徳田四段なので、かなり厳しいと予想していましたが、順当に押し切られたなという印象です。ここから、どう立て直すかに注目。
2022年、振り飛車にとってアツい夏は、まだまだ続きそうです。